星空のセレナーデ⑰
こうしてライヒャの木管五重奏曲を演奏しながら、そのときのことを思い出す。
瑞希先輩との出会い。
そして、その瑞希先輩の吹奏楽部復帰と交換に、私が退部することになったこと。
それからは毎日、ロンと一緒に河原での演奏が私の日課になった。
ロンと二人の、部活動。
そして河原の練習場に来てくれた仲間たちと、会場に来てくれた今川さんと宮崎君。
足立先輩が背負った影の理由。
そして、思い出したことがもう一つ……。
演奏が終わり、伊藤君の所に行って聞いてみた。
あの、木管大戦争のあったオープンスクールの日に来ていたかどうか。
三年前の事だから、覚えていないかもしれないと思いながら聞いてみると、伊藤君は即答で来たと返事を返してくれた。
なんで今まで黙っていたのかと聞くと“学校をサボって行くのに、ふつう事前や事後に言ったりしないだろ”と言われ納得してしまう。
たしかに。
私はサボった事がないけれど、それは後ろめたいだろうし恥ずかしい事だろう。
ライヒャの演奏が終わると、いよいよ最後の曲は「ムーンナイトセレナーデ」
江角君の好きな曲。
そう思って、振り返って見た江角君の隣には京子ちゃんが同じトロンボーンを構えていて、背が高くモデルみたいに江角君と、同じくモデルタイプの京子ちゃんとのツーショットが似合い過ぎてドキッとした。
一旦ドキドキしてしまった心はナカナカ元に戻らない。
いつもなら、なにかあっても演奏を始めた途端、無心になれるのに今日はズット江角君と京子ちゃんが並んだ姿が頭の中から離れない。
“嫉妬ね”
ロンの話ののときに言った瑞希先輩の声が頭の中で呟いた。





