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星空のセレナーデ⑯

 三年前、三年生と下級生に分かれて争った曲を今日は仲良く一緒に演奏する。

 思えばあれ以来この曲を演奏することはなかった。

 この曲で木管戦争を勝った。

 勝たなければ何も変わらないことは分かっていたから、一所懸命練習して本番に挑み、そして勝った。

 けれども“勝つ”ことは本意でなくて、それ以来この曲を遠ざけていたのかも知れない。

 そして今日、あの日戦ってしまった先輩たちと一緒にこの曲を演奏する。

 あの木管戦争の日に、私たちの吹奏楽部は確かに変わった。

 あの日がなければ全国大会の出場も、今ここにも居ないだろう。

 あの日があったから、今がある。

 私たちは目標に向かって進み、この曲だけがあの日のあの場所に置きざれにされたのだ。

 それは、この曲をここで演奏しようと言った足立先輩も、そしてわざわざ集まってくれた当時の三年生も同じだったのだろう。

 澄んだ夜空に、曲の負のイメージが吸い取られて行く。

 曲は次第に透明度を増し、朝露のように純粋な滴となり、星の光に照らされて輝いて行く。

 あの日の“いさかい”が良い思い出に移り変わり、演奏するものの心が一体になる。

 曲を終えたとき、暖かな拍手に包まれたまま、演奏していた仲間がそれぞれに抱き合って泣いた。

 心の中に残った小さな“しこり”

 それが三年間の時を経て、今夜消し去られた。

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