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星空のセレナーデ⑯

「行こうか」


 瑞希先輩に促されて膝の上に乗せられたロンの頭を優しく外す。

 ロンも、もう知っているみたいに姿勢を直してキチンとしたお座りをする。


「行ってきます」


 ロンの頭をポンと撫でて、オーボエを手に持ち席を立つ。

 ステージに見立てた草原に集まる仲間たちが笑顔で出迎えてくれる。

 瑞希先輩、マッサン、コバ、それに里沙ちゃんと私。

 そして山下先輩、足立先輩、大泉先輩に鈴木先輩と斎藤先輩。

 そう。

 このメンバーは、私が一年生のときに経験した“木管大戦争”の時のB・CグループとAグループのメンバー。

 あの時は、最後の課題曲をそれぞれのグループで別々に演奏したけれど、今日は初めてその曲を一緒に演奏する。


「田代も入れよ」


 唐突に足立先輩が田代先輩に声を掛ける。

 田代先輩は首を横に振り拒む仕草をして笑う。

 木管大戦争が決まったとき、私は退部していて最初のメンバーには田代先輩が入っていた。

 それが私と交代になり、それからは田代先輩はマネージャー役にまわり私たちをサポートしてくれた。

 だから、この曲が決まったときに私たちも田代先輩を誘ったけれど、田代先輩から“私は舞台に立っていないから”と断られて諦めていた。


「面倒くさい奴だなぁもう。お前が居たからBチームの結束が強くなったのは調査済みなのだ。だからおとなしくAチームを負かした犯人として連行されなさい!」


 そう言いながら、舞台から歩み寄る足立先輩が田代先輩の腕を引くと観念して素直に舞台に向かう。

 手にはオーボエ。


「なんだ、やる気満々じゃん」

 足立先輩の軽口に会場が湧く。

 曲は“ライヒャの木管五重奏曲ホ短調op,88-1 1st”


「実はね、正直言うと私もみんなと一緒に演奏したかったの」


 私の横に並んだ田代先輩がコッソリ教えてくれる。


「でも、あの舞台に私は居なかった。って、わけだな」


 すぐ隣に居た足立先輩がそう言った。


“はい”と返事をする田代先輩に、足立先輩が


「そこを我慢してみんなに好かれるのが田代。ゴネて嫌われるのが私」


 その言葉に緊張して気持ちが解けたのか田代先輩は噴き出して笑ってしまい、あやまっていた。

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