星空のセレナーデ⑬
日が暮れて、満天の星空が望める丘に向かう。
三年前と一緒にロンが先頭に立ち案内してくれる。
マリーは、その横でおとなしく肩を並べて歩いているのに、好奇心旺盛なラッキーは直ぐに横の藪の中に入ろうとして足立先輩を手こずらせていた。
「もー!ラッキー、少しは落ち着きなさい!ホント誰に似たんだか」
足立先輩の言葉を聞いて瑞希先輩が噴き出して笑う。
ラッキーに悪戦苦闘している足立先輩には悪いけれど、ラッキーが誰に似ているのかは鈍い私でも分かる。
「えー?ひょっとして私だって言いたいの?」
「犬は賢い動物ですから、子供といっしょですよ」
瑞希先輩が笑って言うと、足立先輩が私に助けを求めてきたので、一応“個体独自の性格もありますから”と答えてお茶を濁すと、足立先輩は“そうブリタニーは好奇心旺盛だから”とホッとしたように言った。
たしかにブリタニーは猟犬だから好奇心は強い。
だけどラッキーのこのヤンチャで明るい愛すべき性格は、足立先輩あっての物だろうなと、私は微笑ましく二人を見ていた。
ほどなくして頂上に着くと、足立先輩も瑞希先輩も「わぁ~!」と感嘆の声をあげる。
この日は、あの三年前よりも増して星空が澄んで綺麗に見えた。
あとから登ってきた田代先輩やマッサン、門倉先生や中村先生、そして京子ちゃんや美咲さんまで。
ここに来る、初めての人たちが揃って満天の星空に驚いてくれた。
「この星空のステージ、なんだか一生の思い出になりそう」
京子ちゃんが、そう言ってくれた。
「うん。私も一生の思い出にする」
中村先生がそう答えると、楽器の準備を始めていた皆の手が止り、星空を見上げて頷いた。





