星空のセレナーデ③
キャンプ場に着くと、椅子やテーブルの設置や夕食の準備など、自分でも驚くくらい率先して頑張った。
それは、なんとなく今回のキャンプが修学旅行に行けなかった私のために企画されたものなのではないかと思ったから。
違うかも知れないけれど、感謝の意味を込めて頑張らなくては。
「千春ここは私がやっておくから、ロンとのんびりしておいでよ」
「鮎沢、折角ロンを連れて来たんだから遊んでていいんだぞ」
女子も男子も皆同じようなことを言ってくれ、有難いとは思うけれど甘えちゃいけない気がしていた。
ところが、意固地に頑張っていた私の心に終止符を打たせる人物が現れる。
「千春お姉ちゃん犬と一緒に遊ぼ」
そう言ってきたのは、中学時代の恩師である持田先生の子供タケル君。
三年前はまだ保育園くらいで小さかったのに、いまは小学生になり話し方も仕草も確りしている。
いままで“ありがとう。でも、もう少しやらせて”と断ってきた私だけど、この場合は断ることができない。
「里沙、悪いけれど後頼む」
「オーケー!」
里沙ちゃんに後を頼んでタケル君とロンの傍に駆けよる。
ロンの目が近づいて来る私を捉えて輝いていた。
だけど、タケル君がリードを持っているから引いたりはせず、おとなしくお座りの姿勢のまま待っていてくれた。
「お待たせ」
私が着くと、ようやくロンも立ち上がって喜んでくれて、それから三人でフリスビーを投げて遊んだ。
タケル君は、投げたフリスビーをロンが追い駆けて、それをまた自分の所に持ってきてくれるのに大喜び。
そして途中からはラッキーも参戦してきて、ロンとラッキーが争うようにフリスビーを追いかけていた。





