星空のセレナーデ①
卒業して、長い春休み。
伊藤君が言い出しっぺで、卒業旅行に行く計画が持ち上がった。
送られてきた案内のはがきを読むと、
“参加資格は特になし。
今年高校を卒業した者に限らず、OB、在校生、人間以外の参加も可。
場所は、星の見えるキャンプ場(山小屋)。
現地集合。
参加費三千円。
一泊二日。
楽器は各自持参。“
と、書かれてあった。
「人間以外の参加も可ってなに?普通“ペット可”って書くんじゃない?」
足立先輩が笑って言うと、美緒が思い出したように笑い出す。
「屹度これって“甲本君も来ていいよ”ってことなんじゃないかな」
「あっ、なるほど。あいつ猿だもんね」
美緒と足立先輩が楽しそうに話している。
「へぇ~星空のキャンプ場かぁ、なんだかロマンチックね。ところでカッコして山小屋って書いてあるけれど、これ何?」
瑞希先輩が私に聞いて来ると、美緒が身を乗り出してきて
「それ中学の時、吹奏楽部の納会をどこでやるか議題になったとき、千春が急に“山小屋!”って言ったからだと思う」
と、皆の前で訳をばらす。
初耳だった足立先輩が「鮎沢って当時から面白い子だったんだ」って大笑いすると、瑞希先輩まで「千春らしい」って笑い出した。
「おまたせー」
茂山さんと、エプロンを着けた里沙ちゃんが注文した飲み物を持ってきてくれた。
こうして見ると、里沙ちゃんってエプロンが凄く似合っていて、茂山さんと並ぶとまるで若奥様みたいに見える。
そして、ロンが里沙ちゃんのエプロンに隠れたミニスカートを覗くようにキチンとお座りすると、その隣にはマリーとラッキーも来て同じようにお座りした。
「君たちのも、直ぐに持ってくるね」
里沙ちゃんがお店の奥に戻ろうとしたので「私も手伝う」と言って、追いかけた。





