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春の桜道⑰

 教室で最後のHRが終わる。

 私を含め、女子の殆どが泣いていた。

 その中でも私を驚かせたのは里沙ちゃんの号泣振り。

 いつもの里沙ちゃんなら泣いている私たちを宥めに来てくれて、もらい泣きしてしまうのがパターンなのに、今日はいきなり抱きついて来て泣きじゃくる。

 その姿は、まるで幼子が駄々をこねている様子そのもの。

 抱きついたまま里沙ちゃんは、しきりに一緒に大学に行けなかった事を謝り、このままいつまでも高校生のままでいたいことを激しい嗚咽が続く中で何度も繰り返し話してくれた。

 私も出来る事なら里沙ちゃんの言う通り、この高校生と言う時間の中に留まっていたい。

 でも、それは叶わない。

 時は容赦なく動いて行く。

 その流れに逆らうわけにはいかない。

 そして、その流れの中で私たちは産まれ、赤ちゃんから幼児になり小学生・中学生・高校生を経て大人になり、やがて結婚をして赤ちゃんを産み育てて行く。

 私の胸の中にうずくまり泣きじゃくる里沙ちゃんの髪を撫でながら、中学で出会った時からの里沙ちゃんを思い出す。

 初めて家に遊びに来てくれた時は発育の良い里沙ちゃんを、当時まだエロ犬だったロンが襲ってしまうのではいかとハラハラした事、修学旅行や一緒にスキーに行ったこと。

 中学最後のソフトボールの試合、河原でサックスを練習していた里沙ちゃん。

 そして同じ高校に入り共に木管戦争を経験したり、コンクールに向けて共に励んだこと。

 思い出すことはまだまだ数えきれないほど。

 里沙ちゃんと出会ってから今までの六年間、里沙ちゃんの居ない想い出なんてない。

 そう思うといつの間にか私も里沙ちゃんの頭を抱えて泣きじゃくっていた。

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