表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
438/820

春の桜道⑯

 卒業式は今までの人生で二番目に悲しいものだった。

(ちなみに、一番悲しかったのは幼稚園の卒業式で、この時は大好きだった保育士の先生が私たちを最後に結婚して退職することが分かっていたので“永久の別れ”に号泣して歩けなくなり父に抱きかかえられて帰った)

 式では、あの二階の定位置に陣取った後輩たちが素晴らしい演奏をしてくれて雰囲気を盛り上げてくれるので、なおさら涙が出た。

 最後に会場から出るとき、その二階席の後輩たちを涙が零れ落ちる顔を上げて確りと見る。

 一年生の時には入場したときに後ろをコッソリ振り返って見上げた先輩たち。

 卒業の時には、後輩たちを真直ぐに見ることができる。

 今川さんに宮崎君。

 高橋さんは泣きながらドラムを叩いている。

 加奈子さんにサクラさん、それに堀江君。

 指揮をしている中村先生が半身になり振り返ってくれて目が合い、ニコリと笑って励ましてくれた。

 体育館の出口には、退出係の門倉先生が優しい目で迎えてくれる。

 共に戦ってきた仲間たち。

 もう出口が近くなり、最後にもう一度二階席の吹奏楽部を見上げると、やはり入学の時に感じた感動が込み上げてくる。

 そして、その二階席は近づくにつれドンドン見えなくなり、最後に床に遮られてしまう。


「卒業おめでとう」


 退出するときに門倉先生が声を掛けてくれた。

 哀しみを堪えるので喉の詰まっている私は声が出ないので先生に向かって頭を下げるのが精一杯。

 暗い体育館から外に出ると眩しさで景色全体が一瞬真っ白に見えた。

 やがて、その白いキャンパスに描き出される校舎の脇には、淡い桜色の樹も添えられてあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ