春の桜道⑮
けれども、なんで皆そう思ったのか聞いてみると、帰ってきた答えは揃って“江角先輩の様子が変わった”ということだった。
“えっ、江角君の様子が変わった?”
慌てて振り返ると、こっちを向いていた江角君が慌てて眼をそらす。
「ほらね」
いつのまにか里沙ちゃんまで加わって私を責める。
「前のまんまじゃない」
そう反論する私に、女子連合は「前なら慌てて目をそらさずに、スーッとそらしていた」
そう言われてみると少し落ち着きがないような気がした。
「男の子はね、恋愛感情が隠せない生き物なのよ。それは虫や鳥たちの雄が求愛のために鳴くのと一緒。その逆に女の子はね、千春のような“オクテ”な女の子でも意外に恋愛に関しては堂々としているもの」
いつ現れたのか中村先生が後ろに立ってそう言うと、皆が「ホントホント!」と囃し立てる。
私がその様子をボーっとして聞いていると、○○君が○○さんのことが好きだとか、いつの間にか女子の大好きな恋愛話に移り変わっていた。
直ぐに予鈴が鳴り後輩たちは帰って行ったけれど、それにしてもいつもクールな江角君からなんて思いもよらなくて、もし皆に分かってしまうとしたら私の態度からだと思って気を引き締めていたのが急に緩む。
そして机の上に覆いかぶさると、前の席の里沙ちゃんが振り返って「緊張の糸がプッツリ切れたってところね」とズバリ見抜かれてしまい焦っていると、
「大丈夫よ、そんなに頑張らなくても。どんなに頑張って見ても千春の気持なんか私には筒抜けなんだから」
と、優しく頭を撫でられた。
“どんなに頑張っても、筒抜け!?”
緊張の糸がブツリと大きな音を立てて根元から抜け落ちるのが分かった。





