春の桜道⑭
そして卒業式。
大学受験が始まってから、中々顔を合わす機会がなかった。
こうして皆が教室に集まると“あー、学校なんだな”って、しみじみ思う。
外ではちょくちょく会っていた里沙ちゃんだけど、こうして学校で会うのは久しぶり。
こうして久しぶりに学校で会うとまた新鮮だ。
なんとなく、いい意味で制服が似合わない。
それだけ里沙ちゃんは大人になったって事なのだろう。
「千春。江角となんかあった?」
いきなり里沙ちゃんにそう言われてドキッとした。
正直にキスしたことを言うべきなのか、隠しておくべきなのか。
それにしても一緒に電車に乗ってきたのに、なんで教室に入ってから気が付くの?
「別に、なにもないよ」
とりあえず今はまだ伏せておく。
「そっか。なんだか江角の様子が変だから、一緒に受験に行った後にでも何かあったのかと思った」
聞いていて、里沙ちゃんの勘が鋭すぎて怖い。
朝のHRが始まる前に吹奏楽部の後輩たちが教室を回ってくれた。
その時も今川さんと高橋さん、それに一年生の加奈子さんにまで“江角先輩と、なにか進展ありましたか?”って聞かれてしまい顔が真っ赤になる。
「ないない!」
と、一応否定しておいたけれど、さすがに里沙ちゃんに聞かれた時と違い焦ってしまい丸わかりだろうなと思う。





