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春の桜道⑬

 梅の花が咲き終わり、桜の開花が気になるころ大学の合格が発表された。

 江角君も私も無事第一希望の大学に合格して、コバと伊藤君、それに美緒は同じ路線にある県立大に合格。

 そしてS女の京子ちゃんは本当に横浜に戻って来て実家近くにあるF女学院大学の音楽科に合格したと連絡が入り、私の周りが大学受験で一喜一憂していると言うのに結局里沙ちゃんは何処の大学も受けずに調理師専門学校に行くことになった。

 中学で出会って以来六年間一緒に居て、これからも肩を並べて同じ道を歩いていたいと思っていたから少し寂しい。

 でも高校を卒業して次のステップに移ると言うことは、こういうことなのだろう。

 大学受験も終わった三月の大安の日に、和服を着て“おめかし”した美樹さんが家族と一緒に来た。

 結納は二月に我家の方から美樹さんの住む名古屋に行って済ませている。

 一旦家に挨拶に来てから車二台で料亭に向かう。

 こういうとき、ロンはいつもお留守番になるのだけれど、何故か今回は一緒に車に乗った。


「いいんですか?」


 私がそう尋ねると、美樹さんは笑って「家族になるんだから当然良いに決まっているわ」と答えてくれた。

 料亭に着くと、美樹さんの言葉のままロンもウェルカム。

 ロンが初めての料亭にソワソワするのかなと思っていたら、家にいるときより少し態度が大きくて可笑しかった。


「結婚式は六月に決まったわ」


 部屋の縁側から立派な松の木のある庭を見ていた時に美樹さんに教えられ、おめでとうございますと返事をした。

 良いお天気だった。

 まだ桜の花の咲いていない肌寒さの残る陽気。

 そのなかにあって、この立派な松の木には冬を絶えたという自負があった。

 それを見ていると、美樹さんが兄と一緒になる喜びから、美樹さんに兄を取られてしまう寂しさが急に襲ってきた。

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