春の桜道⑤
部活とは違う仲間内が集う河原の演奏会。
和気あいあいとしたなかで、京子ちゃんはトロンボーンを演奏するときだけ何故か剥き出しの闘志で江角君と張り合っている。
名門のレギュラーというプライドなのかなぁ、と思っていたけれど、どうも違う気がする。
演奏していないときでも、特に江角君と私が話しをしていると割って入ってきたりして、かなり江角君のことを気にしているみたい。
もしかして江角君の事が好きなのかな?
そう思うと、何だか少し寂しい。
それでも、京子ちゃんは相変わらず私と仲良してくれるし、私も楽しい。
話し掛けて来てくれる京子ちゃんの笑顔を見ていると、イケメンの江角君には京子ちゃんみたいに都会的な雰囲気の美人のほうが良く似合う。
そんなことを思い浮かべると、また気分が沈む。
お喋りしながらも、私の気持ちが沈んだのが分かったのか、京子ちゃんは色々と癒そうとしてくれる。
だけど、この気持ちの原因は京子ちゃんだから、私の気持ちは心で思っている以上に意固地になりナカナカ気分が戻って来ない。
自分の事ながら情けないし、何にも悪くない京子ちゃんに申し訳ない。
「ちょっと待ってて」
そういって京子ちゃんはマリーたちと遊んでいたロンを連れて来てくれた。
ロンの透き通る黒い瞳に悪い気持ちが捉えられて消えて行く。
私の心が晴れて行くのを察した京子ちゃんから報告を受ける。
「私、春には神奈川に帰って来るんだ」





