春の桜道④
お正月は毎年恒例になった吹奏楽部の気の合う仲間たちで初詣に行った。
九州から帰省していたS女の京子ちゃんは今年も参加してくれたほか、あまりこっちには帰っていなかった鶴岡部長もコンクールに続いて来てくれた。
今年は、その他にも今春に結婚する兄と美樹さんも参加して、私たちとは全然違う美樹さんの“おとなの振り袖姿”の艶やかさに見入ってしまう。
初詣が終わったあと一旦着替えてから、いつもの河原に集まった。
私はロンを連れて、足立先輩の家で待ち合わせて一緒に走った。
ラッキーも大きくなり、さすがに猟犬の血筋だけあって走りも軽快。
負けまいとして先頭を走るロンを抜こうとはせず、たえずロンの斜め後ろ側を走っていた。
それでも、河原に着いて瑞希さんとマリーを見つけると足立先輩のリードをグイグイ引っ張ってマリーのもとへまっしぐら。
ロンはと言うと、特に負けまいとして急ぐこともなく、少し走りが早くなった程度。
「急がないとラッキーにマリー取られちゃうぞ」
ロンに向かって小さく囁くと。
“余裕だよ”
と、言わんばかりの涼しい表情をして振り向いた。
襲い掛からんとする勢いのラッキーに困惑気味のマリーは、ロンが着くと案の定ロンを盾にして興奮し過ぎているラッキーを遠ざける。
“なるほどね”
ロンの言っていた意味を理解した私はロンとマリーの頭を優しく撫で、それから興奮しているラッキーを宥めに入った。





