春の桜道③
とうとう部活が終わってしまった。
でも私たちには感傷に浸っていられる時間はあまりない。
他の三年生たちよりも、あまりに遅れてしまった受験勉強。
今日も放課後に私の家で里沙ちゃんと一緒に勉強している。
だけど最近少し気になることがある。
それは里沙ちゃんの勉強の態度。
燃え尽き症候群なのだろうか、勉強中にボーっとしていることが多いような気がする。
今だってズット横に寝そべっているロンを撫でている。
ロンの方は撫でられるのが大好きだから、いつも里沙ちゃんが来るのを楽しみにしているけれど、肝心の勉強は疎か。
あまりにボーっとしている時間が長いと、私も注意するのだけれど大丈夫なのかな。
十二月になって美樹さんと兄の結婚が正式に決まった。
結婚式は来年の三月。
それから美樹さんは四月から、県の動物愛護センターにてペットセラピストとして働く。
初めて会ったときから、こんなお姉さんが欲しいな。と、思っていたのが現実になる。
とは言っても、美樹さんたちは結婚後に綾瀬の方にアパートを借りるので離れてしまうのだけど。
「ちはる、千春」
急に里沙ちゃんに呼びかけられた。
「えっ、なに?」
「ぼーっとしない!」
いけない、私まで。
小休止の時、里沙ちゃんにさっきボーとして何を考えていたのか聞かれて美樹さんと兄の結婚の事だと答えると、里沙ちゃんは「結婚も好いなぁ」と憧れ色の目で、窓の外を見ていた。
そとは、もう木枯らしが吹いていてサッシの窓をカタカタと揺らしていた。





