春の桜道②
もう一度言われたい。
今なら、素直にその胸に飛び込んでしまいそう。
けれどもバスは二人の間に距離を置いたまま、まるで揺り籠のように優しく夢へと誘う。
そして、私もいつの間にか皆と同じようにバスの座席に身を委ねた。
深夜、ようやくバスが学校に着くと、私たちより先に会場を出た足立先輩たちや、新幹線で帰った鶴岡先輩たちなど、会場で片付けを手伝ってくれた人たちの他にも先生方や父兄、それに会場に来れなかったOBなど沢山の人たちが出迎えてくれた。
出迎えてくれた人たちは、片付けも手伝ってくれたから私たちは学校に着いてすぐに家に帰る事が出来た。
家。
家の玄関を開ける前から、その向こうにいるロンが私を待っている事は分かっている。
それも特上の笑顔で。
迎えに来てくれたお父さんも、それを分かっていてくれて私の前にドアを開けようとしない。
疲れた顔は見せられないと思い、玄関の前で一旦立ち止まって深呼吸する。
手を頬に当てて笑顔になるマッサージ。
そしてドアノブに手を掛けて、ゆっくりと回す。
暗い世界が、パアーっと明るくなる。
玄関にお座りして待っていてくれたロンが一瞬飛び上がって、またお座りする。
私が靴を脱ぐために少し屈むと、もう待ちきれないように顔を潜らせてペロペロと私の顔を舐める。
そして私の肩に手を掛ける。
私も、それに応えてロンを抱きしめ、そして誘うように体を反転させて仰向けになる。
ロンは私の肩を押さえて、一瞬勝ち誇ったように私の目を見ると優しく顔を舐める。
「ありがとうロン。一杯寂しい思いをさせちゃったけれど、おかげで目標に届いたよ」
改めて報告したけれど、ロンはそんな言葉はお構いなしにズット私に甘えていた。





