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分かち合う喜び⑭

 審査委員長が表彰状を掲げると、私たちの学校だけじゃなくて他の学校の生徒や一般の観客も静まり返る。


「青葉台高校、ゴールド金賞」


 そう言われて、いったい何のことだか分からなくなった。

 観客席からキャーと言う悲鳴のような歓声が上がる。


“テロ?こんなに学生が沢山居る所で、テロなの?”


 怖くなり、隣に居る江角君に助けてもらおうと振り向くと、江角君が拳を振り上げて今にもその拳を私に叩き込むところだった。

 そして、そんなに恐ろしいことをしようとしている江角君の顔は、昔テレビのロードショーで見た映画“シャイニング”のジャック・ニコルソンの様に笑っている。

 凍り付く恐怖の中、右手だけが暖かくて、それがこの恐怖を半減させてくれる。


「鮎沢。おい、鮎沢大丈夫か」


 江角君に肩を揺すられて気が付くと、そこは外の通路だった。

 その顔はもうシャイニングの時の顔ではなくて、いつもの優しくてクールな江角君の顔。


「江角君、私……」


 どうしたのか自分で分からなくて聞くと、表彰状を貰った後から急に様子がおかしくなり、舞台から降りる所で倒れそうになったのだそうだ。

 直ぐに江角君と里沙ちゃんに抱きかかえられて、今は涼しい外の通路で横になっている。


「ロン?」


 右手をずっとロンが舐めてくれていた。

 名前を呼んで頭を撫でると、顔を肩の上に置いて心配そうに見つめてくる。

 そのときになって、ようやくロンに報告しなければいけないことを思い出した。


「ロン。いつも寂しい思いをさせて御免なさい。でも、それも今日で終わり。皆のおかげで念願の金賞、ついに取ったよ」


 そう告げると、ロンは優しく頬を舐めてくれた。

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