分かち合う喜び⑬
暫くロンとマリーと仲良くしながら、美樹さんや先輩たちとお喋りをしていると、江角君が申し訳なさそうに呼びに来た。
「鮎沢、そろそろ良いか」
「あっ、はい。ゴメン直ぐ行く」
そう言ってロンの頭を優しく撫でて離れようとすると、ロンが抱きついて来たので頬を両手に包み込んで鼻先にキスをする。
ロンからも返礼で、私の鼻先をペロリと舐められた。
「じゃあ、また後でね!」
皆に手を振って江角君の方へ駆けた。
いよいよ表彰式。
結果は渡される表彰状を読み上げるときに、初めて分かる。
去年までは会場の席に着き、皆で手を繋ぎ祈るような思いでその発表を待ちわびていたのに、今年壇上で発表を受け取るのは江角君と私。
表彰状を受け取る学生たちが発表順に整列する。
常連校や強豪校と呼ばれる吹奏楽コンクールを目指す生徒なら良く知っている学校が、半分以上並ぶ。
私たちにとっては憧れる高校。
今までは大きな存在だった。
でもこうして一緒に並んでいると、私たちと同じようにドキドキしながら発表を待つ普通の高校生たち。
なんだか、そう思えるのは隣に居てくれる江角君の存在が大きいのかな?
江角君って背も高いし、よく見ると皆が言うようにイケメンだし。
緊張の中にも少しの余裕。
S女は今年も金賞を受けていた。
“神奈川県、青葉台高校”
私たちの名前が呼ばれる。
江角君の顔を見上げると、目が合った。
表彰状を受け取るまでの、ほんの少しの間だけ、会場に居る部員たちと同じように手を握りたいと思っていた。
恐る恐るスーッと手を伸ばしてみると、いつの間にか江角君の手が迎えに来てくれていて手をつなぐ。
緊張で熱くなった私の手と違い、ひんやりして気持ちがいい。





