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分かち合う喜び⑥

 ホテルについて直ぐに練習して、夕食の後にまた練習。

 それから慌ててお風呂に入り、携帯が鳴るのをじっと待っていた。

 相部屋の里沙ちゃんも、私の携帯が鳴るのが待ち遠しそうにしている。


「きゃっ」


 携帯がやっと鳴ったとき、思わず驚いて声が出てしまった。


「よし!行くよ」


 里沙ちゃんが、私の手を引く。

 私のお楽しみなのに、妙にはりきっている里沙ちゃんが少し可笑しくて笑ってついて行く。

 そして玄関を出ると、真っ先にロンが飛びついてきた。


「ロン!」


 私は、バスの中で見た夢と同じようにロンを抱きしめて撫でる。

 ロンも同じように私の顔を舐めた。

 一緒に着いて来ていたマリーも遅れて私に飛びついて来て、私はふたりとも撫でた。


“あれ、ラッキーは?”


 私の疑問に直ぐ気が付いた足立先輩が答えた。


「ラッキーは、まだヤンチャ盛りだから車での長時間移動だと危険がいっぱいあるからお留守番。それに恋の邪魔にもなるしね」


 たしかに、若い犬とか慣れていない犬などは自動車の狭い空間が苦手だ。

 窓を少しだけ開けてやると、その隙間に鼻先を突っ込む。

 もう少し開けると、顔を外に出す。

 そして稀に、その隙間から外に飛び出してしまうこともある。

 外に飛び出さないように注意していても、今度は休憩のため自動車から降ろすと急に走り出したりする。

 ロンも若い時は、そうだった。


「千春、大丈夫?」


 昨日、夜更かししていたのを知っているお母さんが聞いてきた。


「だいじょうぶ、よ」


 心配させてはいけないとバスで寝てナカナカ起きれなかったことは伏せたけど、里沙ちゃんが言い出さないか気になって見ると、茂山さんとなにか楽しそうに話しているところだった。


 それにしても里沙ちゃんと茂山さんは仲が良い。

 私たちが中学生のときに、兄の大学のスキー合宿に参加させてもらったときから、まるで従妹か兄妹みたい。

 いっそのこと、付き合っちゃえば好いのに。

 なんて、他人事だと結構気楽に考えられるけれど、さっきバスの中で寝ぼけて江角君に抱きついていた自分を思い出すと気楽には居られない。


“寝言とか言っていなかっただろうか?”


 そう思うと、急に耳が熱くなる。

 それを何故だかロンが不思議そうな顔で見ていた。

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