分かち合う喜び③
広い庭園に囲まれたギリシャ建築のホール。
集まった多くの人たちが綺麗な服を着ている。
天井の高いホールに流れる音楽。
白いタキシードを着た背の高い男性に見守られながら、同じく白いドレスを見に纏ったわたしが壇上でオーボエを構えている。
その視線の先に居るのは、白くて甘い感じの犬。
“誰?”
会場の一番後ろの列から、ロンとは違うその犬に問いかける私。
そんな私には、お構いなしに演奏を始める壇上のわたし。
わたしが演奏を始めた曲は“風笛”
ピアノを演奏してくれている男性は、黒色のスーツを着た少しだけ年上の人。
ピアノの陰に隠れて足しか見えないけれど、私はその人を知っている。
わたしが演奏を始めると直ぐに背の高い白のタキシードを着た男性がヴァイオリンを構えた。
私の演奏を終えたフレーズをタキシードの男性が追う。
清々しさの中に、透き通った優しさと哀しみという違う感情が込み上げてくる旋律。
ピアノの伴奏のもとに奏でられる演奏は、素晴らしい程に息があっていて二人が長く親しいパートナーであったことが私にもよく分かる。
不意に、壇上の二人の演奏が誰に向けられているのだろうと思い注意してみると、さっきの白い犬が真直ぐに二人を見ていた。
そして、壇上の二人も。
何故だか急に涙が溢れて目の前が霞む。
持っていたハンカチで涙を拭うため俯いて、再び顔を上げると観客席に集まっていた沢山の人たちは何処に行ったのか全員居なくなっていた。





