407/820
最高の輝きに向かって⑩
翌朝、早く起きてロンと一緒に河原を散歩した。
秋の河原には鈴虫やコオロギたちの美しく奏でる曲が草むらの、あちこちから聞こえてくる。
私たちも明日には、この小さくて可愛らしい虫たちと同じように、名も知らない大勢の観客の前で演奏するのだ。
しばらくそうやって散歩していると、草むらに鼻先を突っ込んでいたロンが急に振り向いた。
振り向いた先は、私ではなくて私の斜め後ろ側。
“なんだろう?”
と、私も振り向いてみると、向こうから掛けてくる二人と二匹。
“足立先輩と瑞希先輩だ!”
でも二人とも何故?
「おはよう」
驚いている私を“置いてけぼり”にして先輩たちから先に挨拶される。
「おはようございます。こんな早くから、どうしたんですか?」
「待ち伏せ」
ふたりは、そう答えるとクスッと笑った。
でも待ち伏せなら私より先に居るはずなのに、私はともかく、それをロンが気付かない訳がない。
「瑞希とね、私の家で二人が散歩で通り過ぎるのを待っていたから、一応“待ち伏せ”なの」
足立先輩が“待ち伏せ”の意味を教えてくれる。
「えっ。でも何故?」





