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最高の輝きに向かって⑧

 何とか大会前までには恥ずかしくない内容で演奏できるまでになった。

 それにしても、みんな強くなったと思う。

 運動能力や力を競い合う競技ではないけれど“強い”と言う表現が合うようになってきた。

 これほどまでにハードな練習に、音を上げることなく付いて来るのだから。

 正直、去年の大会前に過労で倒れてしまった自分が恥ずかしい。

 猛練習の甲斐があり、なんとか大会前ギリギリに曲は自分たちの物になった。

 出発前夜。


「ロン!ゴメンね。散歩、行こうか!」


 この二ヶ月近く、まともにロンを散歩に連れ出したことがなかった。

 言葉に出さなくても分かるのか、私が学校から帰って来た時からロンの目は期待感に満ちてキラキラと輝いていた。

 家に帰ったのは、いつもと同じ十時過ぎ。

 明日が出発日であることはカレンダーに書いているけれど、ロンは字は読めないはず。

 その日は夕食を食べたあと直ぐ、ロンに声を掛けた。

 いつもなら私が食事をしている間、少し離れた所で寛いでいるのに、キチンとお座りしたままキラキラ目を輝かせながら真直ぐに私を見ていた。


「君にはテレパシーが有るのかな?」


 家を出る前、そう言ってからチョンと鼻先を突くと、得意そうに突かれたところをペロリと舐めるロン。

 リードを繋ぐ前から大はしゃぎでナカナカ首輪にリードが留められない。


「もう!」


 少し頭に来てしまい、少しだけ不満を漏らすとロンは座ったまま“気を付け”の姿勢を取ってくれたので、ようやくリードを繋ぐことができた。


「夜遅いから気を付けなさいよ」


 と、お母さん。


「一緒に行こうか?」


 と、お父さんが言ってくれた。


 でも今日は久し振りに二人きりでデートがしたかったので、お母さんには“はい”と言い、お父さんには“いいよ”と返事を返す。

 最近、家から出勤するようになった兄は今夜はどこかに行ったとかで居なかった。


「行ってきまーす!」


 ロンのリードを持ち元気よく駆けだすと、ロンも跳ねるようにして私と並んで駆けた。

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