最高の輝きに向かって⑦
兄の計らいで、駅裏にある市民会館の小ホールを夜に使わせてもらえることになった。
これで朝から晩まで練習ができる。
土曜日も日曜日も学校で練習して、最終下校時刻が過ぎると市民会館に移動して更に九時まで練習する毎日。
去年は過労で倒れたけれど、今年は持ちこたえている。
我ながら体力が付いたものだ。
それでも家に戻り、玄関のドアを閉めた途端“バタンキュー”と玄関に突っ伏してしまうこともしばしば有る。
そんなとき、いつもロンは近くに来てくれて優しく舐めてくれ、私が起き上がるまでズット傍に寄り添って居てくれる。
夜十時に軽く夕食を食べてシャワーを浴びると直ぐに十一時。
それからだと宿題をするのが精一杯。
宿題が終わる頃には日にちがいつも変わっている。
その日は一時半に勉強が終わり、振り向くとロンがキチンとお座りした姿勢のままウツラウツラと居眠りを始めていた。
いつも私に付き添ってくれるロンにも負担が掛かっているのだなと思うと、明日もしロンの命に何かあったときには今日までの事を屹度悔やむに違いない。
そう思うと優しくロンを抱きしめて泣いていた。
「ロン、寂しい思いをさせてゴメン」
謝っているのは私。
悪いのは私なのに、ロンは優しく涙を拭って優しくしてくれる。
いつも、そう。
ロンは、ずるい。
私の不注意で怪我をさせてしまったときも、過って除草剤を撒かれた草むらに入らせてしまったときも、いつも私の事を責めることもなく、ただ落ち込んでいる私に優しくしてくれる。
ここ一ヶ月近く散歩に連れて行ってあげられないのに、文句も言わないし態度にも表さない。
こんな優しい子と一生を共にできないなんて、せめて私が結婚して子供が生まれて、その子供が大きくなるまで一緒に生きていて欲しい。
それが叶わないことを私は知っている。
だけどロンは知っているのだろうか?
そう思うと、ベッドの中でロンを抱いたまま止めどなく涙が零れ落ちた。





