最高の輝きに向かって③
残る目標は、金賞。
鶴岡部長が三年かけて、やっと全国へ届いて銀賞。
昨年は銅賞。
決して気が緩んだわけではない。
今年こそはと、全国大会で演奏されることの多いシャイニングロードを選び、今日まで練習してきた。
「どうしてシャイニングロードでは、いけないのですか?」
不満ではない。
意地でもない。
疑問として、自然に口から出た言葉。
「グレードよ」
「グレード……?」
曲には、その難易度によりランク付けされた数字が付く。
簡単な曲は数字が少なく、難しい曲は数字が高い。
これをグレードと呼んでいる。
マーチ・シャイニングロードのグレードは4。
これは全国大会の難易度としては平均的な部類に入り、私たちのレベルで挑戦するには最も相応しいレベル。
今の私たちの実力で、これ以上の曲を選んでしまうと安定した演奏は出来ないだろう。
これは自由曲を選ぶときに持田先生も中村先生も江角君も同じ意見だったはず。
全国大会出場を決め、その日まで二ヶ月もない今、何故それを覆すのか聞くと中村先生は変更を提案した理由を説明してくれた。
「たしかに変な話だよね。完璧だって褒めておきながら曲を変えろって言うの。私も自分の言っていること変だと思うよ」
中村先生は組んでいた足を組み替えて続ける。
「でもね、君たちは私の思っていた予想をはるかに超えてしまった。つまり頑張って予想以上の結果を出してくれた」
隣に居る江角君の顔をチラッと見ると“うん”と頷いてくれた。
「正直、ここまで完璧に演奏するとは思っていなかった。だから変更を提案した理由は聴く側の“欲”なんだ」





