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冷たい水⑩

「里沙。いま幸せ?」


 幸せそうに笑う理沙ちゃんに聞いてみた。


「とぉっても幸せよ」


 理沙ちゃんは、そう答えて抱き着いてきた。

 やきもちなのか,ロンがワンワンと鳴いて囃し立てる。

 私に抱き着いたまま理沙ちゃんが耳元で囁く。

 最初は練習がきつくて、しんどくてプライベートを犠牲にしてまで何やっているんだろうって思っていたけれど、千春に付いて来て良かったと。


 理沙ちゃんと別れて、ロンと家に帰る途中思った。

 本当に良かったと笑えるために、純粋に喜びを分かち合うためには結果を出すしかないと。


 学園祭も手を抜かず頑張った。

 中学以来、久しぶりにスウェーデンリレーで四百メートルを走り、そして優勝した。

 相変わらずロンは参加できないし、見にもこれなかったけれど、ロンとの散歩で鍛えた中距離の走りをロンと一緒に走っているつもりで駆け抜けた。

 ロンの事を想いながら走ったせいなのだろう、実際に走り終えたとき隣に居るはずのロンが空想だったと分かると急に悲しくなってきた。

 瞼から零れ落ちそうな涙を拭うため、水道で顔を洗いに行く。

 水は私から悲しい熱を取り除いてくれるように、冷たくて気持ちよかった。


 学園祭が終わって家に帰り、今日のことをロンに報告する。

 ロンは私の話の内容なんてお構いなし。

 ロンにとって重要なのは屹度、キチンと向き合うこと。

 その次に話し掛けてくれることなのだろう、向き合って話をしている間中喜んで甘えてくれた。

 それがその日一番嬉しかった。

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