冷たい水④
去年の全国大会前、練習中にミスが続いていた。
そして私自身、過労で倒れてハンター邸の病院で休んだ。
瑞希さんは、それで休日を設けることにして、それでミスもなく大会を乗り切ることができた。
でも、あれは大会直前。
今は未だ東関東大会も終わっていない。
ここで全体を休ませる決断をするべきなのだろうか?
それとも、ただガムシャラに突き進むべきなのだろうか?
一年生の時は鶴岡部長のもとで突き進み、二年生の時は瑞希部長のもと一旦休んだ。
そして、今はどうするべきなのだろう?
江角君に相談することにした。
夜遅いのでメールにしようか迷ったけれど、結局電話する。
一回目のコールが終わらないうちに、江角君は電話を取ってくれた。
「もしもし鮎沢ですけれど、夜分すみません」
夜にこちらから電話をするのは初めてだったので、抑え気味に声を出すと何だか自分でも可愛い子ぶっている声になり恥ずかしい。
「なに?」
ぶっきらぼうな江角君の返事が、私の恥ずかしさを吹き飛ばす。
「部活の事なんだけど」
コンサートを自粛して、練習にも少しだけ休みを取り入れてみようかと提案してみると、江角君から反対された。
「それで全国大会に行けると思うんだったら、そうすれば良いけど。僕は、そうは思わない」
ストレートな、言葉の中には悪気がないのは分かっている。
だけど、何となく怒られたようで落ち込んでしまう。
結局江角君からは、どういう結果に結びつくかはやってみなくては分からないから提案するのであれば皆の意見を聞こうと言うことになった。





