冷たい水③
私が泣いているのを知ったロンは、体の向きを変えずに首を百八十度回転させて顔を私の方に向けた。
黒くて透明な瞳が私を捉える。
「ごめんね。辛かったのは君の方なのに」
そう。忙しかった間中、私は色んな人と出会い、いろんな経験をさせてもらって充実していた。
楽しかった。
そして、すっかりロンの事を考えるのを忘れていた。
ロンの体を引き寄せる。
体も、ちゃんと私の方を向くように。
人間より体温の高いロンの体が心地いい。
フワフワの体も。
ロンの顔を見て、お互い見つめ合ったまま、ずっとロンを撫でていると、ロンは“もういいよ”とでも言うように私の伸ばした腕を舐める。
腕を伸ばすと私の腕に頭を乗せ、伸ばしたロンの前足が私の肩に乗る。
ロンの瞼が少しずつ狭く閉じられてゆき、息はしばらくすると落ち着いた寝息に変わる。
このままロンがいつまで寝るのか分からないけれど、私も付き合ってあげよう。
幸い、寒い時期ではない。
安心して幸せそうな寝顔を見せてくれるロンを見つめながら、私もウトウトとしてしまう。
ボーと半開きの目に映るのはロンの顔のはずなのに、いつの間にか今日のあの時の里沙ちゃんの顔に変わる。
「里沙ちゃん……」





