コンサート⑥
県大会の結果は、私たちの青葉台と伊藤君たちの相一が揃って東関東大会の切符を手に入れることができた。
初の県大会突破に大喜びの相一。
もちろん私たち青葉台も、結果に対して何の文句も有るはずはなく全員大喜び。
私なんか生まれて初めての部長と言う立場で、緊張して不安ばかりだったから余計嬉しくて。
でも、それをジッと我慢していたのに里沙ちゃんが「部長から総評を戴きます」なんて言うものだから、話そうとした途端に声が嗚咽に変わってしまい、外野からも“いよっ。感動屋!”なんて声を掛けられる始末。
一事が万事手放しで喜べる訳ではないことは分かっていても、こうして共に一所懸命練習してきた成果が結果に結びついた瞬間だけは、みんなと一緒に喜びたい。
涙で霞んだ瞳で捕らえた江角君は、相変わらず苦い顔をしていて、いつまで経っても変わらずに中学で出会った頃のまま。
それが可笑しくて、少しだけ愛しくて余計に涙が溢れてしまった。
帰り際、伊藤君が「関東大会でも勝ち残って全国大会初出場で金賞取る」と威勢のいいことを言い意気揚々と帰って行った。
私たちはと言うと、バスに乗って片付けが終わったあと、それまでニコニコしていた中村先生からキツイ言葉をもらった。
それは“今日の出来では全国大会は無理”だと。
「よく頑張った」
と言ってくれた門倉先生とは意見が分かれたので、何が良くて何がイケなかったのか家で考えて来ることが宿題になった。
里沙ちゃんは「なぁんにもイケないところなかったじゃん」と怒っていたけれど、私は江角君と同じで、今回の演奏に一抹の不安を抱えていた。
と、言っても何がどうだったかは、答えな見つかっていないけれど。





