ゲリラライブ⑪
その後、甲本君は川崎市の定時制高校の3年生に編入という形になった。
仕事のほうは、茂山さんのお父さんが知り合いの瓦屋さんを紹介してくれて、晴れた日には毎日屋根に上っている。
瓦屋さんなら、日が暮れたあと作業することもないだろうから、夜の高校には行きやすい。
それにしてもあの時、甲本君の話を聞く相手役が、なんで私限定だったんだろう?
江角君や里沙ちゃんだって、甲本君の事を心配しているんだから結局同じ答えに辿り着くはずでしょ。
部活の帰り道に、なんとなくそういう不満を江角君にぶつけていた。
江角君は終始相手にしてくれず、里沙ちゃんや今川さんと宮崎君は苦笑いしているばかり。
しばらく歩いていると家の屋根の上から話し声が聞こえてきた。
「どうもあいつに言われると反発してしまうけど、あの子に言われたときだけは不思議と素直になれるんだ」
「お前、その子が好きなんじゃないか?」
「好き?ああそうだと思う。小学校のときからズットズット好きだった」
「惚れた弱みってやつだな」
「大将。からかわないでくださいよ」
それから二人の会話は笑い声に変わり、青い空の上に登って行った。





