ゲリラライブ⑨
う~ん。
なんか人生相談を持ち掛けられたようで肩の荷が重い。
そもそも私は、そう言うタイプじゃない。
でも、甲本君のために考えなくっちゃ。
昔見たテレビドラマで言っていたじゃない“なぜベストを尽くさないのか”って。
私が悩んでいることに気が付いて、それまでズット黙って聞いていた里沙ちゃんが助け舟を出してくれた。
「それだったら芸能事務所に入っちゃうとか良くない?」
あっそれ良いアイディアだと思ったのは私だけで、甲本君も実は一番にネットで芸能プロダクションを探して採用されないか聞いて回ったらしい。
だけど、何の実績もないミュージシャンなんて採用しようと思ってくれるところはなく、逆に養成所に入れとかお金のかかる事ばかり言われたそうだ。
「立木。口を挟むな。安直過ぎる」
江角君に言われ里沙ちゃんが渋々引き下がる。
そうなると、私が考えてあげるしかない。
今まで甲本君から聞いた話を整理して考えていると、ひとつだけ私なりに良いと思うアイディアが見つかったので恐る恐る尋ねてみた。
「甲本君は高校時代のバンドを、過去形にされた事が嫌だったんだよね」
「うん」
「それだったら、働きながらバンドをやるのってどうだろう」
「えっ?でも会社に部活みたいなのが有るのは大きな会社ばかりだろ。それに吹奏楽部や軽音楽部なんかある会社に高校中退の俺が入れるはずないよ」
確かに今や就職自体難しい世の中だと、いつもお父さんやお母さんが言っていた。
特に高校中退となると更に就職は狭き門なのだろう。
でも、私には考えがある。
「仕事は仕事として一所懸命やれる?」
「まあ、やろうと思えば……でも、それじゃあドラムがやれないじゃないか」
「ドラムは学校でやろう」
「学校?」
甲本君と里沙ちゃんが同時に言った。
「そう。学校のクラブ活動」
「あの~。鮎沢、分かっていると思うけど、俺はその学校をもう辞めているんだぜ」
「知っている。だから違う学校に入り直すの」
「違う学校って?」
「定時制高校よ」





