ゲリラライブ⑧
「ごめん」
甲本君が俯いたまま謝ってきたので、焦って手を横にバタバタと振ると、そんな私の動作はお構いなしに甲本君は話を続ける。
「謝んなくちゃいけないのは俺のほうだ。しかも鮎沢だけじゃなく……江角に言われたときには頭に来て無視していたけど、まったく江角の言う通りだ」
甲本君は、さらに深く俯いてしまい話を続けた。
「俺は自分勝手に演奏して、俺の音を好きになってくれる奴が一人でも増えればいいと思っていたけど、実際は俺の音を嫌いになる人も増やしていたんだな」
私は俯いている甲本君から顔を外して、江角君のほうに向ける。
江角君は、私を優しい瞳で見つめてくれたあとコクリと頷いてくれ、それが合図だったように私は甲本君の前地面に膝をついて、地面と水平になるまで俯いてしまった甲本君の肩に手を置いて起こした。
「大丈夫だよ」
と、声を掛けて。
見上げた甲本君の瞳は涙が滲んでいた。
「大丈夫だよ」
もう一度今度は勇気づけるように強く同じ言葉を掛けると、甲本君は服の袖で涙を拭って「ありがとな鮎沢」と肩に乗せた私の手を掴んで言った。
「で、これからどうする」
久し振りに江角君が声を掛けると、甲本君は江角君に向かって「とりあえずゲリラライブは辞める」と言ったあと私に目を戻して聞いてきた。
「鮎沢。俺、どうしたらいい?」と。
いつもなら聞かれてドギマギしてしまうところだけど、今日は何故か落ち着いて考えることができた。
「一緒に考えましょ」
「一緒に考えてくれるのか?」
「だって、友達だもの」
私が返した言葉に、甲本君の背中がピクッと動いた気がした。
「ともだち」
甲本君が呟くように言ってから一瞬間が開いたので、久し振りにあったのに図々しかったかなと反省していると、急に甲本君があの中学生の時のままの元気な笑顔を向けてくれて聞いて来る「どんな俺だったら良いか」と。





