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ゲリラライブ③

「甲本君」

「甲本先輩」

 追いついてきた里沙ちゃんと今川さん、それに宮崎君が驚いて名前を呼んだ。

 公園のベンチに腰掛けた甲本君は、はにかむように片手だけ上げてニヤッと笑い、その呼びかけに答える。

「こんな所でゲリラライブなんかして、学校はどうしたんだよ!」

 江角君の言葉の中には、怒りと心配が入り混じっていた。

「やめた」

「やめたって!?」

 みんなが驚く中、甲本君は淡々と話を始めた。

 甲本君は私立の工業高校に進学して、そこの軽音楽部に入った。

 工業高校と言っても、男子ばかりではなくデザイン系の学科もあるので女子も結構いる。

 しかしながら学校の評判は芳しくなく、辞めたと聞かされると甲本君に何か悪いことが起きたのではないかと、みんな一様に心配した。

 でも、甲本君が辞めた理由は私たちが心配する理由とは違う。

 軽音楽部でバンドをやりながら、なにか違うと感じた甲本君はぬるい学生バンドに疑問を持ち仲間と対立するようになる。

 もちろん一年生の時は楽しかった。

 でも自分が目指すものと、ここでは何かが違う。

 ある日、街でゲリラライブをしているグループを見かけ彼らの音楽に惹かれた。

 彼らは好きな時に好きな場所で好きな曲を演奏する。

 合法的な手続きは一切なし。

 怒られることもあるし、殴られたことも。

 それに今日のように警察に蹴散らされることも。

 ロックはハート(心)だ。

 心を伝えるために、ややこしい準備なんて必要ない。

 伝えたいとき伝えたい自分がいれば、細かい事はどうだっていい。

 たとえチューニングが狂っていようとも、ギターの弦が切れていても、ドラムに穴が開いていようとも。

 大切なのはハート。

 ゲリラライブの一員になり、のめりこむようになって学校も行かなくなった。

 そして二年生の冬に正式に学校を辞めた。


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