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さくら②

 マッサンと田代先輩は東京にある別々の私立大に、そして瑞希先輩は兄が通っていた地元の国立大に進学したので、みんな家を出ることもなく、今日こうして河原に集まっている。

「それにしても、みんな好きだねー」

 里沙ちゃんが周りを見て言う。

 今日集まったのは、春休みで帰って来ている南副部長を含めた十三人と三匹。

「大学出るころには小編成のオーケストラできるんじゃない?」

 本当に、そうなったら嬉しいな。

 一人で始めた河原(ここ)での練習、サックスを始めた里沙ちゃんが入り、江角君たちが入り、それから瑞希先輩たち、そして足立先輩たち。

 最近ではサックスも上手になってきた茂山さんまで。

 音楽が好きで、私の友達のことを大好きに思ってくれているロンもこの河原が大好きだ。

 今は大好きなマリーと、弟分のラッキーと仲良く遊んでいるけど、曲が始まるといつもチャンと聞いてくれる。

 楽しそうに遊んでいるロンたちを眺めていたら、南先輩に声を掛けられた。

「ところで、今年の自由曲何にしたの?」

「マードックからの最後の手紙です」

「うわっ!狙いにいってるわね」

「気迫充分ね」

 足立先輩と山下先輩に囲まれた。

「今年は、この手紙を受け取って貰わないといけないから是非、北の(かた)も来て下さるようお願いします」

 瑞希先輩が、その上の先輩たちに言う。

 そう、鶴岡部長が残した最後の部員たちからの、最後の演奏なのだ。

「それにしてもアイツ、よく六年も大学行こうって言う気になったよねぇ」

「どのみち大学院にも入るだろうから、ゆうに八年は帰ってこないね」

 話しは、ここに来ていない鶴岡部長の話になり、先に社会人になる足立先輩たちが将来就職する会社に後から入ってきたら、思いっきり復讐してやる。

 などと、盛り上がっていた。

「音合わせるよー」

 そろそろ、いい時間と判断した瑞希先輩の声が気持ちよく伝わる。

「ハイ。じゃあ千春頼んだわよ」

 私が楽器を構えると、みんなも静かになり同じように楽器を構える。

 リードに息を吹き込みA音(ラの音)を鳴らす。

 みんなも私の音を聞きながら同じ音になるように楽器を調整する。

 いつの間にか、遊んでいたロンたちが私の前で伏せをしていた。

 河原の桜も今が最も美しい頃。


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