晩秋から春へ⑥
今年もみんなで初詣に行く。
行き先は去年と同じで、JR桜木町駅から歩いて直ぐの所にある伊勢山皇大神宮。
S女の古矢京子から大晦日に連絡があって、いま神奈川県の実家に帰っているので一緒に初詣に行きたいと言われたので集合時間と場所を教えておいた。
今年の待ち合わせ場所は日本丸の前。
去年はコレットマーレ前の広場だったけど、人が多すぎたので変えた。
足立先輩と一緒に電車に乗った。
里沙ちゃんは他所に行っているので別の電車で行くと言っていたので居ない。
桜木町駅を出ると直ぐに山下先輩と、九州から帰省している南副部長が見つけてくれて声を掛けてくれた。
四人でコレットマーレの広場を歩いていると、マッサンとコバのペアと今川さんと宮崎君のペアも合流して、横断歩道で瑞希先輩と田代先輩と合った。
待ち合わせ場所の日本丸前に着くと、振袖を着た里沙ちゃんが大きく手を振ってくれて、その横には和服姿の茂山さんが居て、江角君に伊藤君、美緒ちゃん、それに空色の振袖を着てお人形のようにおとなしくしている古矢京子さんも居た。
高校の仲間たち、それに中学の仲間たちの中に合って、古矢京子さんの知り合いと言えば、私しか居ない。
「京子ちゃん久し振り!」
京子ちゃんという呼び方で声を掛けたこともなかったけれど、ここは「古矢さん」と言うより親しみを込めたほうが良いだろうと思い、出来るだけ大きな明るい声で名前を呼んだ。
「あー誰かと思っていたら、あの時のS女の人」
里沙ちゃんと瑞希先輩ほか現部員はみんな気が付いた。
「S女で一番かわいい子だ」
マッサンが思った通りのことを言い笑わせた。
確かに古矢京子はS女に限らず、どこに居ても良く目立つ美人だ。
「あー。博多どんたくでトロンボーン拭いていた子だぁ」
福岡の大学に行っている南副部長が言った。
「ありがとうございます。覚えていて下さって」
古矢京子が礼を言うと、マッサンが「こげな美人、忘れられんたい」と適当な博多弁を喋って笑わせた。
「なんでS女の生徒が、ここまで初詣に?」
足立先輩の問いかけに古矢京子が答える。
「S女には音楽留学で行っていて、家はこの先の山手にあります」
それでみんな納得した。
神社に向かうとき、私はズット古矢京子の傍に居た。
私以外に知り合いが居なくて寂しいだろうと思って。
古矢京子のほうも、私にベッタリくっ付いていて二人で腕を組んで坂を上った。





