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晩秋から春へ③
授業が終わると真っ先に音楽教室の裏にある教員準備室に飛んで行き、そこで門倉先生と江角君の三人で部活の進め方を話し合あう。
そして、それが終わってから部室に入る。
天井がいつもより高く感じられた。
三年生の抜けた部室は急に広くなり、余ったスペースに大きかった存在と、居なくなった寂しさを思い知らされる。
江角君と一緒に入る部室は、少しだけ甘くて暖かく感じられた。
ところが、金管グループへと江角君が行ってしまった途端、刺すような視線に脅かされる。
高橋さんだ。
ティンパニーからシロフォンへ移った高橋さんは、なぜ私にあのような目を向けて来るのだろう。
そう思ったとき、東関東大会が終わったあとバスで帰る福田さんの顔がふと目に浮かんだ。
あのとき私が、帰って行く福田さんに挨拶するためにあげようとした手を許さなかった冷たい目。
目の悪い福田さんが、私に気が付かなかったと思っていた。
いや、そう思うことで、自分で解決してしまおうと思いこんでいたのかも知れない。
なにか高橋さんの目に、私は重大な責任を負わなければいけないような気がしていた。





