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再開⑩

 客席の中は、さっきまで居た外のように騒々しい。

 すべての学校が演奏を終え、ひと時の安堵感。

 緊張から解き放たれるのは、もう少し先。

 この後の結果発表が終わってから。

「おかえり」

 席に着くと、里沙ちゃんが神妙な顔で迎えてくれた。

 二年生とは言え、里沙ちゃんにとって初めての全国大会。

 緊張して、いつもの元気さが影を潜めている。

 後ろを振り返ると、陽気なマッサンとコバの二人も、いつもよりテンションが低い。

 今川さんと宮崎君は、黙って目を閉じていて、私を呼んでくれた江角君は……。

 江角君を探していると、刺すような視線と当たった。

 高橋さんだ。

 私は、後ろ向きの姿勢を直ぐに前向きに戻す。

 どうして高橋さんは、いつもあんな眼で私を見るのだろう?

 目が悪いから、元々あんな眼なのかも知れないけれど、少し苦手だ。

 前に向きなおると、隣の席に瑞希先輩が来て座る。

 そして、こらから審査結果の発表を始める旨がアナウンスされると、一瞬にして会場が水を打ったように静まった。

 演奏順に金・銀・銅のどれかが与えられる。

 午前中に演奏を終えた古矢京子のS女の名前が呼ばれたあと「ゴールド金賞」とアナウンスされ、S女の生徒が集まっている場所から歓喜の声が上がった。

 勝ち負けは無いし、落選もない。

 順位もなくて、あるのは金・銀・銅の三つだけ。

 オリンピックなら、どのメダルをとっても大喜びだけど、取れるものならやっぱり金メダルが欲しいと思う。

 発表が進み、いよいよ私たちの順番になった。

「東関東支部、神奈川県青葉台高校」

 名前が呼ばれると、瑞希先輩が私の右手を握ってきた。

 その手を握り返して、左手で隣の里沙ちゃんの手を取って握った。

 里沙ちゃんも私の手を握る。

 三人で祈るように目を瞑った。


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