再開⑧
「ち・は・る。久しぶり」
三年振りに合う美樹さんは、以前と変わらない明るくて、良く通る声で挨拶してくれた。
前と違うのは、少し照れているところ。
「美樹さん」
そう言うと階段を駆け上がり抱きついた。
美樹さんは、胸に飛び込まれて驚いていたけれど、直ぐに私を優しく抱きしめて髪を撫でてくれた。
「ありがとう。約束通り戻って来てくれて」
美樹さんの胸の中で泣きながら、それだけ言う。
今は、それが精一杯。
私が落ち着いてから、美樹さんと二人、階段を降りてホワイエのベンチに腰掛けた。
「いつ日本に帰って来たんですか?」
ありきたりだけど、やはり真っ先に聞きたいこと。
「一昨日の夜」
「兄と一緒に帰って来たんですか?」
「ううん。お兄さん今はフランスでしょ。だから、違う飛行機で来て成田で待ち合わせ」
美樹さんに言われて、初めて兄の赴任先が最初の国から変わっていることを知る。
家族には何も言わないくせに、彼女には教えちゃうのね。
「どうして我家に寄らないで二人で国際会議場に来たんですか?」
「うん。私の家、今は名古屋に引っ越しちゃったんだ。それに、今回は休暇で来ているだけで時間がなかったの。ごめんね」
「いえ」
慌てて顔の前で手を横に振り、もう高校二年生なのに我儘な子供みたいに問いかけるばかりの自分が恥ずかしかった。
「千春ちゃん凄いねー。二年連続で全国大会なんて、さっきも堂々として立派だったよ」
「あ・ありがとうございます」
何にもできずに、ただ演奏していただけで褒められたのを少し恥ずかしく感じた。
だって、美樹さんは自分のやりたい事に向かって、自分一人の力で道を切り開いているのだから。





