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再開⑦
演奏を終え機材の片付けが終わって、直ぐに二階席に向かった。
二階席への階段を駆け上る。
会いたかったし、確かめたかった。
人違いではなく、あれはたしかに美樹さんだったという事実を。
駆け足で登る階段。
足元ばかり見ていて、人とぶつかりそうになる。
「すみません」
そう言って通り過ぎようとしたとき、男の人の手が私を捕らえた。
「千春」
振り向いて驚いた。
私の手を取ったのは兄。
「美樹さんは?」
直ぐ兄に聞くと、今度は兄が驚いた顔をして黙った。
「美樹さんは、どこなの?一緒に居たよね」
もう一度聞くと、兄は階段の少し上に視線を移す。
私も振り返ると、そこにはやはり美樹さんが居た。





