再開④
「だけど……」
「ここまで来て、ビビッてんじゃねーぞ!」
突然響き渡った足立先輩の怒鳴り声に、凍り付くように一瞬静まり返るリハーサル室。
足立先輩は堰を切ったように話す。
「正直言って、去年この大会に出れたのは鶴岡のおかげだ。そして今年出ることが出来たのも半分は鶴岡のおかげで、来年もまたここへ来るだろう。それは初めから鶴岡によって計画されたものだから」
“計画されたもの?”
“鶴岡部長によって?”
唾を飲み込むことさえ躊躇わられるほど、みんな静かに足立先輩の話に聞き入った。
「鶴岡は部長になる前・いや、この青葉台に入る前から既に全国大会へ来ることを決めて、計画を練っていた。そして当時同じ中学三年生だった南、山下、私などを個人の分際で勧誘して来た。そして高校に入ってからは次に入学してくる生徒の勧誘、もちろん次の年も。こうして自分の音楽を継承してくれる仲間を増やすことによって、何年後かに金賞を獲ると言うのが鶴岡元部長の計画だった」
「なぜ、最初から金賞を狙わなかったのですか?」
誰かが聞く。
確かに、鶴岡部長なら狙えたかも知れない。
「おそらく、狙えるものだったら最初から狙いたかっただろうと思うよ。そのためにワザと内部分裂を起こさせたりして、技術とチームワークの向上を図ったりしていたし」
“木管大戦争”の時のことだ。
あれも鶴岡部長の計画の中ってこと?
質問に答えた後、足立先輩は諭すように言った。
「でも、たった一年や二年では狙えなかった。鶴岡部長は勿論、私たち卒業生もそれは分かっていた」
「今、このメンバーの力でどこまでいけるか。突っ走った先が去年の銀賞」
「来るべきしてここまで来たんだ」
「あとは結果なんて気にしないで胸を張って演奏しろ!」





