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再開②

 リハーサル室には当然観客は居ない。

 居るのは私たち青葉台高校吹奏楽部だけ。

 いつもの部活と同じはずなのに、ここには目に見えない観客がいた。

 それは自分自身。

 本番を前にして、冷静に見つめ問いかけてくる自分。

 ちゃらんぽらんな気持ちなら、いくらでも逃れられるだろう。

 でも、真剣になればなるほど、自分は自分に厳しくて逃げ場がなくなる。

 その厳しい自分の問いかけに対して、確固たる答えを言えるため私たちは一所懸命努力を積み重ねてきたのだ。

 今は答えることができる。

 どんな自分の問いかけに対しても。

 気合を新たにリハーサル室に臨んだものの、練習を始めてみると、一番緊張しているのが三年生だと分かった。

 緊張が音に出て、鋭くて滑らかさがない。

 雰囲気。

 こう成りそうな雰囲気は感じていた。

 屹度、三年生の中には、去年の鶴岡部長を中心に引っ張っていた前の三年生の面影が残っているのだろう。

 そしてそれを自分と比較して、怯える。

 去年の三年生に比べて、自分たちはチャンとできているだろうか?

 下級生から見て、見劣りはしないだろうかと。

 確かに去年の三年生は、久し振りに我が校をこの全国大会に出場させ、しかも銀賞という成果も出した。

 メンバーにしても鶴岡部長をはじめ南副部長、山下先輩、足立先輩など有名なコンクールでの入賞経験者が多くいた。

 今の三年生には、個人で有名なコンクールで入賞をした人などいない。

 だからと言って、去年の三年生に比べて劣っている訳ではない。

 それは、下級生は勿論、当の三年生たちも分かっていたはず。

 まさか、ここに来て、この不安が出てしまうとは思わなかった。

 この緊張感は直ぐに一年生の数人に伝わってしまい、音が乱れ、門倉先生が慌てて曲を止めた。


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