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再開①

 古矢京子と別れて控室に戻るため建物の中に入ると、廊下の壁に寄りかかっている江角君が居た。

「江角君」

 心配して待っていてくれていたのだと言うことは直ぐに分かったけれど、それは聞かない。

 屹度、聞いてもはぐらかさせるだけ。

 もしも今、この場所で、優しく肩を抱かれたなら、私は躊躇わずにその胸に顔を埋め暖かさを求めた事だろう。

 それだけ私は弱い人間なのだ。

 そう思いながら、優しく肩を抱いてくれるはずもない江角君の腕を、そして顔を埋めるはずの白いカッターシャツの胸を見ていた。

「このあとリハーサル室に行って、それから本番だぞ」

 私の気持ちも知らないで、大丈夫か?と聞かずに必要事項を伝えてくれる江角君の言葉を好きだと思った。

 今、一番大切な事実はこれしかない。

 兄だったら同じように言うはず。

 弱気は直ぐに消し飛んで、古矢京子の為にも頑張ろうと前向きになれる。

「大丈夫。頑張ってみせる」

 背の高い江角君の顔を見上げてそう言うと、江角君は慌てて目を逸らして「頑張れ」と、言ってくれた。

 S女レベルには到底かなわないけれど、私は私なりの演奏をしてその音を聞いてくれる人たちの心に届けよう。

 控室に戻ると、もうみんな臨戦態勢に入っていて楽器を持って緊張した様子で、ザワザワと聞こえてくる話し声が渇いている。

 直ぐに里沙ちゃんが飛んで来てくれた。

 私が古矢京子に合ってきたことは知っているのに、そのことは聞かない。

 里沙ちゃんが抱きついてくれたので、その柔らかい胸に顔を埋めると髪を撫でてくれた。

 同じ歳なのにお姉さん、いやお母さんみたいに優しい。

「あー、また甘えてる」

 田代先輩にからかわれてしまい、それでみんなが笑った。

 そして直ぐにリハーサル室に移動の合図が掛かる。


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