表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/820

古矢京子⑩

 演奏を終え、オーボエのリードから口を離し、最後の息を空に向かって吐き出す。

 空に向かう息は少しだけ白っぽく見え、空の一部に溶けるように消えて行った。

 いつの間にか近くに集まっていた人たちから、思いがけず拍手をもらい少し恥ずかしい。

「どうだった?」

 恐る恐る古矢京子のほうに向き直る。

 彼女は俯いていた姿勢を正し、驚くほど真直ぐな目で私を見つめて来た。

 そして、その目は涙の湖で揺れていた。

「ありがとう。やっぱり演奏してもらって良かった」

 そこまで言うと古矢京子は、堪えられなくなり私に抱きついて来て泣いた。

「なにがあったの?どうして私なの?」

 もともと、なにかあると思っていたので聞いた。

「もう少し、もう少しだけ」

 嗚咽の中から絞り出すように答える声。

「うん、いいよ」

 私の胸で泣いている古矢京子の髪を、そっと撫でながら応える。

 古矢京子は暫くの間そしていて、その間に私たちを囲んでいた人たちはスッカリ居なくなっていた。

「大丈夫?」

 体を起こそうとする古矢京子の顔を覗きこみながら聞くと、彼女は子供のように手で涙を拭いながら有難うと礼を言ったあと、分けを話してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ