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古矢京子③

「いつからオーボエ演奏しているんですか?」

 また古矢京子が手マイクで聞いてきた。

「ち、中学からです」

 私がそう答えると、今度は「ぉおぅ~」と言う波のような驚きとも頷きとも取れる、微妙なニュアンスの音に包まれた。

「では、誰に習っているのですか?」

 古矢京子の顔も、周りを取り囲む生徒たちの顔も、特に意地悪な表情には見えない。

 それどころか、妙に好意的。

 何故、S女という超有名実力校の部員たちからこのように興味を持たれているのか理解できないけれど、ここは友好ムードを壊さないように真摯に回答すするしかない。

「中学では持田先生、そして高校に入ってからは門倉先生から習っています」

 そう私が行った途端、囲んでいた輪の中は静まってしまった。

 雰囲気が暗い。

 私の回答の何がいけなかったのか分からないけれど、明らかにこの雰囲気を作ったのは、さっきの私の回答に間違いない。

「それって、学校のしぇんしぇいじんね?」

「うちらしりたかとは、学校以外のところばい」

「とぼけとーと?」

 標準語で話してくれる古矢京子の言葉と違うイントネーションの囁きが聞こえてくる。

 初めて聞く、九州の言葉に慣れていない私には、私の回答が彼女たちの興味の的を射ていない事だけ伝わったけれど、咄嗟に入ってきた言葉がどういう意味なのかは分からなかった。

「学校以外では、どこの何という先生に付いて練習しているのですか?」

 古矢京子が、バツの悪そうな顔で質問してきた。

 屹度、彼女たちが望む答えは、私の個人レッスンを指導しているのが著名な先生である事なのだろう。

 でも、学校以外では誰の指導も受けてはいない。

 嘘を言っても仕方がないし、元々嘘をつく気もなく嘘自体思いつかないので、そのまま答える「学校以外では誰にも習っていません」と。


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