名古屋国際会議場⑨
電気を消したあとの暗い部屋の中、ロンと江角君の事を交互に考えていた。
今頃ロンは、どうしているのだろう。
江角君は、どうしてあんなに優しいのだろう。
「よかったの?」
不意に隣のベッドで寝ている里沙ちゃんに声を掛けられた。
「んっ?」
何のことか分からなくて聞き返す。
「薬、高橋さんにあげて体調は大丈夫なの?」
言われてから、おでこに手を当ててみる。
「うん。平気みたい」
風邪のばい菌は、江角君の優しさに負けてスッカリ出て行ったみたい。
「どれどれ?」
里沙ちゃんの手が伸びて来て、私のおでこを触る。
「熱くない。ほんと治っちゃったね」
嬉しそうに言ってくれるその言葉は、まるでお母さんみたい。
私は、おでこに当てられた里沙ちゃんの手に自分の手を重ねて「ありがとう」と言うと、その手が私の髪をグジャグジャに撫でまわしてきた。
「あーっ、もうっ」
ワザと少し怒った声を出すと、手を引っ込めた里沙ちゃんが「おやすみ」と言って布団の中に包まる。
私も、おやすみを言って鼻まで布団を上げた。
カーテンにそっと手を伸ばして夜空を見上げる。
星が一つずつ灯りをともしながら増えて行く。
その中の、一番初めに目に入ってきた星が私に何か合図するように瞬いた。
屹度、この星の瞬きはロンからのメッセージなのだろうと思う。
だから私も、この星を介してロンにメッセージを送る。
「大好きだよ」って。





