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名古屋国際会議場⑧

 薬を飲んでいるとき、出て行っていた今川さんが高橋さんを連れて戻ってくるのが見えた。

 入って来た高橋さんと目が合う。

 高橋さんは、何故か私よりも今飲んでいる薬のビンを睨むような目つきで見ている気がして、慌てて飲み干したビンを隠すように仕舞った。

 同時に仲居さんが夕食を慌しく運び出す。

 テーブルには色とりどりの料理が並ぶ。

 マッサンが立ち上がり、明日の予定をみんなに伝えたあと、瑞希先輩が明日に備えて楽器のメンテナンスの確認をすることと、早く寝ることなどの注意事項を伝え、最後に門倉先生が健闘を祈る意味で乾杯の音頭を取る。

 私たちも、それに合わせて水の入ったコップを持ち上げ、それぞれのコップ同士カチンと合わせた。

 田代先輩、理沙ちゃん、今川さんとコップを合わせて、次は高橋さんのコップに自分のコップを近づけようとすると一瞬かわされそうになる。

 気落ちした私がコップを引こうとするタイミングで、彼女はコップを合わせてきた。

 私が慌ててコップを合わせると、彼女はニッコリ笑って「乾杯」と言った。

 さっきの問い詰めるような口調は、ただの癖なのだろう。

 相手を敬遠する気持ちを持ってしまったことを後悔する。

 悪いのは私。

 やっぱり風邪なのかな?

 だから、気持ちに余裕がなかったのだろう。

「それ一本もらえないでしょうか?実は私も少し風邪気味で」

 高橋さんが笑顔で指さしたのは、江角君からもらった薬の袋。

「いいよ、まだあるから」

 葛根湯があと二本、それに栄養ドリンクと、おでこに貼る熱さまし。

 江角君からもらったものだけど、特に私だけにプレゼントされたようなものではないので、葛根湯と栄養ドリンクをあげた。

 高橋さんは具合が悪いので、朝の分も欲しいと言ったので残ったもう一本の葛根湯と熱さましの入った袋ごと渡す。

 食事が終わると直ぐに食卓を片付けてミーティングをした。

 全員が楽譜を広げ、全体、そしてそれぞれの注意する箇所の最終チェック。

 それから全員一緒に楽器のメンテナンス。みんなが一緒にやるから間違えてしていることや、上手な裏技まで注意し合ったり教え合ったりできた。

 そしてあっと言う間に、消灯時間の10時がきた。


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