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いざ名古屋⑦

 そして、いよいよ全国大会へ出発する朝が来た。

 薄っすらと東の空が明るくなり始めた午前五時半過ぎ。

 秋の残り香の中に、冬の冷たさが混ざった土手沿いの道をロンと走る。

 吐く息が白い。

 休みの日に、練習に使っている河原の空き地には、もう何人かの人影が見えた。

「おはよう」

 爽快な心をそのまま声に出すと、向こうからも同じ心が声に乗って帰ってきた。

 ロンが久しぶりに会う仲間を見つけ、強くリードを引く。

 河原に集まったのは、卒業した山下先輩に足立先輩とラッキー。

 それと瑞希先輩とマリー、田代先輩にマッサン、コバ、今川さんに宮崎君、里沙ちゃんに江角君も。

 それから、学校は違うけど美緒と伊藤君も来てくれて、なんと中学時代の吹奏楽部で顧問をしてくれた持田先生と奥さんの麻子さんと子供の聡くん。

 それに茂山さんの合計十七人と三匹。

「聡君大きくなりましたね」

 江角君が持田先生にそう言うと、聡君は麻子さんの後ろに隠れて何だか少し不機嫌そう。

 緊張しているのかなと思っていると、里沙ちゃんが小学生かと思ったと話し掛けたときには前に出て来て、ニコニコしながら威張っていて可笑しかった。

 私の隣で一緒にその様子を見ていた瑞希先輩が耳元で「男の子って単純ね」と囁く。

 確かに男の子は単純だ。

 楽しそうに遊んでもらっているロンとラッキーを見てそう思う。

 だって二人ともマリーや女の子を中心に遊んでもらっているんだもの。

 それに比べて女の子は気まぐれ。

 マリーは桁外れに遊んでいるかと思えば急に落ち着いたり、男の子二匹と違って自分のペースで人や物に左右されずに遊んでいた。

 でも、それは飼い主の気質も受け継いでいるのだろう。

 足立先輩も私も、どちらかと言うと感情に流されやすいタイプだけれど、瑞希先輩は違う。

 木管大戦争のときも、そして部長になった今も、芯がしっかりしてぶれない。

 そんなことを考えていると、急にキャーっと言う里沙ちゃんの悲鳴が聞こえた。

 見て見ると、ロンとラッキーが争うように里沙ちゃんのスカートの中を目指して追いかけていた。

 同時に気が付いた足立先輩と慌てて止めに走る。

 前言撤回。

 決してロンは私の気質なんて微塵も受け継いではいない。

 ロンのエロ気質は生まれつきなのだ。


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