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いざ名古屋①

 定期テストも終わり、いよいよ大会前最後の練習。

 全国大会を目の前にして、授業なんて受けている場合じゃない気分なのに、普通に授業を受けなければいけない状況には正直焦りを感じる。

 でも、どんなに焦ってみたところで、何も変わらない。

 焦りは心の余裕をなくし、余裕のない心は失敗を招く。

 練習できる時間も限られてきた中で、今までに無かったくらい色々なミスが出て来て、全体練習できなかった試験期間を恨めしく思った。

 部長の瑞希先輩は、みんながどんなにミスをしても演奏を止めずに、何もなかったように振る舞っているので、これではいつまで経ってもミスは無くならないのではないのかと心配していた。

 まともに曲が終わることがないので、江角君は怒っているのかな?

 そう思って、曲が終わったとき一番後ろの列に座っている江角君を振り向くと、いつもと変わらないクールな表情?

 いや、いつもと少し違う。

 自分の近くにいるトロンボーンやトランペット、ホルンの仲間に自ら進んで明るく声を掛けている。

 その光景を、列の先頭にいる自分の位置を少しだけ恨めしく思って見ていた。

 小休止の時、直ぐに里沙ちゃんが飛んで来て「熱視線!」と囃し立てられ、何のことか分からない私が聞くと、さっき江角君を見ていた目が“熱視線だったとの事。

 ミス続きで江角君が怒っていないか心配で、チラッと確認しただけだと答えても聞いてくれない。

 里沙ちゃんとそんな話をしていたら、いつの間にか今川さんや田代先輩も傍に来て「熱い、熱い」と揶揄われた。

 いつもなら恥ずかしくて止めてもらいたい話なのに、何故か否定しながらも話を受け入れている。いや楽しんでいる自分に気が付いて不思議に思う。

 みんなと笑っているとき、輪の中に瑞希先輩が居ないことに気が付いた。

 部室を見渡しても居ない。

 一体どこへ行ったのだろう?

 心がざわついた。

 ミスを犯しながら笑っていられる私たちと、そのミスを注意しない瑞希先輩。

 瑞希先輩は何を思っているのだろう?

 部長と言う立場に苦しんでいるのではないだろうか、こんな私でも何とか役に立ちたいと思って、私は輪の中から外れて一人部室を出た。


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