ハンター坂⑦
どこからか、風に運ばれて花の香りが入って来る。
さっきまで見ていた夢の、お花畑の香り。
江角君から、登校途中に私が倒れたことを聞かされたので、体のあちこちを動かしてみたけれど、どこも痛くないのが不思議。
怪我のあとでも有るのだろうか?と今度はシーツを外して腕を見たけれど、点滴のホースが付いているだけで打撲や擦り傷の跡もない。
次に、体育館座りしたベッドの上でスカートを少し捲って、足のほうを確認する。
膝にも擦り傷は無い。
もう少し上のモモのあたりは、どうなのだろうと、もう少しスカートを捲り上げたとき、ドアが開いて先生が入って来た。
四十代くらいの綺麗な顔立ちをしている女医さん。
隣に並んでいる江角君に比べると低いけれど、女性にしてはかなり背が高い。
背の高さを見比べたとき、江角君と目が合った。
珍しくオドオドして驚いているような目。
その目を顔ごと私から背けると、頬が赤い。
一体どうしちゃったんだろう?
あまり見る事のない江角君の態度を不思議がっていると「なんだ、その恰好。何とかしろ!」って怒鳴られた。
言われている意味が分からない。
私は一応病人で、今はその病院のベッドで……。
「キャーッ」
スカートを捲り上げていたのをスッカリ忘れていて、慌てて元に戻す。
美人の女医さんは、それを見てクスクス笑い、何やら江角君に話しかけていた。
江角君も女医さんに返事を返していたけれど、そのやり取りは医者と患者の付き添いと言う関係ではなくて、親しい男女のように見える。
その様子に、さっきのスカートを捲り上げていたところを江角君に見られて、顔が焼けるように恥ずかしかったのが嘘のように、心が深海に落ち込んだように冷たくて押しつぶされそうになった。





