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ハンター坂⑤

 体育祭も終わり、いよいよ十月末に行われるコンクールに向けラストスパート。

 学校で練習できる時間は限られているけれど、それを最大限有効に活用できるように私たちも電車の中でも譜面を読み、イヤホンから流れるのは課題曲と自由曲。

 土曜日も日曜日も朝から最終下校時刻まで練習する。

 十月中旬に中間テストの発表があり、全国大会前でも例外なく部活動は一旦停止させられる。

 部活の無い状態に、ホッとするよりも焦りの気持ちのほうが大きい。

 その焦る気持ちは勉強のほうも同じで、今まで吹奏楽部の猛練習でロクに勉強していなかった分、今度は朝から晩まで勉強漬けの毎日だ。

 机にかじりついて夜遅くまで勉強していると、いつも傍に居てくれるロンは、よくあくびをする。

 遊んでもらえなくて、つまらないのは分かっているけれど、どうしようもない。

 部活で勉強が遅れた分を何とか取り返そうと我武者羅に勉強しているので、夜中に机にかじりついたまま寝落ちしする事もしばしばあり、そんな時はロンが起こしてきてくれる。

「お前、チャンと寝ているのか?」

 電車の中で江角君に言われた。

 頭がボーっとしていて直ぐに答えられずにいると、里沙ちゃんからも幽霊みたいと心配される。

 確かに今の私の状態は幽霊そのものだと思う。

 どこをどう歩いたのか、誰と何を話しているのかさえ夢の中の出来事のような気がする。

 夢の中でロンとお花畑で遊んだ。

 ラベンダーやコスモス、マーガレットにチューリップ、バラにすみれ。

 四季折々の花たちが一斉に咲き誇る中を、追いかけっこして遊んだり、一緒に歩いたり、シロツメ草で首輪を作ったり、そして芝生の絨毯の上でノビノビと寝転んでお昼寝。

 もちろんロンも私と一緒。

 ロンの柔らかい毛並みが、まるでお布団のように暖かい。

 寝ながら自分の顔をロンに押し付けて、スリスリして甘えるとロンも私の首筋を舐めてくるので、くすぐったくて思わずクスクス笑ってしまう。

 それにしても気持ちが良い。

 目の前のカーテンが揺れ、それに合わせるように光が瞬いている。


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