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ハンター坂③

 市大会から始まった夏休みも、この東関東大会と共に終わった。

 練習漬けの夏休みだったけれど、朝の電車内の勉強会や帰り道での雑談など、まるで地上に出て七日間しか生きられない蝉のように、一日の時間を大切に使ったと思う。

 そして、それが私にとって掛け替えのない夏休みの楽しい思い出となった。

 新学期が始まると、授業中にでも練習がしたくてウズウズしてくる。

 夏休みのように長い練習時間は取れない上に、体育祭の練習が入るからだ。

 本当は夏休み後半から他の人たちは練習に入っていたのだけれど、私たち吹奏楽部は目の前に迫っていた東関東大会のため、その期間だけ練習を免除されていた。

 サボっていた訳ではないのだけれど、他の人たちより遅れている分、練習がキツイ。

 特にダンスの練習は、振り付けをナカナカ覚えられなくて泣きそうになったけれど、私と違って里沙ちゃんは直ぐに覚えてしまった。

 部活の終わった放課後の帰り道では、その里沙ちゃんに振付を教えてもらい、何とか出来るようになった。

 さすが元体育会系。

 いくら張りきっていても、夜の八時前に家に戻る頃にはクタクタになっている。

 玄関に入るなり、いつも出迎えに来てくれているロンの横でゴロンと寝転ぶ。

 ロンは、そんな私の肩に首を乗せて優しく寄り添ってくれる。

 帰りが遅くなってから、お父さんやお母さんが夕方の散歩に行ってくれていて、申し訳なく思うけれど、家族全員から世話を受けているロンにとっては良いことなのだろう。

 玄関でロンと一緒に横になっているとスーッと疲れが解けて行き元気が戻って来る。

 起き上がり、手と顔を洗い制服を着替えて夕食を済ませ、直ぐにお風呂に入る。

 お風呂から上がってから、少し勉強をしてからロンとのミニ散歩に出る。

 暑かった昼間の空気も、九月の夜になると大分涼しくなってきているのが実感できる。

 いつものベンチに腰掛けてキラキラと星の輝く夜空を見上げると、いつものようにロンは私を見上げていて、それが本当に嬉しくて満たされた気持ちになる。

 疲れていたためか、いつもより長く夜空を見上げていた。

 すると、急に目の前の空に花火のようなものが横切って行く。

 ゆっくりなのか、それとも恐ろしく早いスピードなのか分からない。

 空の頂上付近から流れ出した花火は、時折火の粉を散らしながら西の空に尾を引いて流れて行く。

 流れ星?隕石?

 いつの間にか西の空で消えてしまってから気が付いたのは、願い事を三回言うのを忘れていた事。

 充分余裕はあったのに。


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