ハンター坂①
全国吹奏楽コンクールに向けて、市大会・県大会、そして東関東大会と、今年も勝ち抜くことが出来た。
県大会では伊藤君や美緒と会い、東関東大会では久しぶりに福田さんと会った。
伊藤君と美緒は地元の高校なので、久し振りと言う感じではないけれど、それでもこういう場所で会えることが本当に嬉しかった。
東関東大会では、県外の音大付属高校に行った福田さんに久し振りに会うことが出来て懐かしくて話し込んでしまった。
福田さんの家は、中学卒業と同時に引っ越したので、こうして会って話をするのは中学以来だ。
背はあの時のままで私より低いけれど、変わっていた黒いセルロイド製の眼鏡が年齢より確りした印象を与えている。
江角君から「大人っぽくなったね」と言われると、白い顔をポッと赤らめてうつむく仕草は、おとなしくて可愛い昔のままだった。
福田さんは別れ際「いつまでも仲が良くて羨ましいな」とポツリと言ったので里沙ちゃんと私の事かと思って答えると、少し離れたところに移動していた江角君を指さし私を驚かせた。
「付き合っているんでしょ」と言われ否定すると、大人びた顔をして「嘘」と言い私を睨んだ。
どう対応していいのか分からずに、私が慌てていると今度は愛らしい顔をして「嘘よ」と言うと急に踵を返し走り出した。
その様子を呆気に取られて見送っていると、福田さんは少し離れたところで振り向いて「じゃあね」って笑顔を見せながら手を振ってくれた。
私も大きく手を振って返したけれど、福田さんは直ぐに駆けだしてしまいこっちを振り向かずに人波の中に消えて行った。
どうしちゃったんだろう。
なんとなく、私から逃げるように去って行ったように思えて後味が悪い。
中学時代は、もっと気楽に付き合えていたのにと、複雑な気持ちになっていた私の肩をポンと江角君が叩き、どうしたのかと聞く。
どういう風に説明すれば良いのか戸惑っている私に
「思春期だから色々あるさ、気にするな」
と、励ますように言ってくれ、その言葉で今までモヤモヤしていた気持ちがスーッと晴れていく気がした。





